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一行じゃないけど物語を書いていくスレ
- 1 :海老天 ★ :07/11/04 00:39:44 ID:???
- 要望板>>6によりスレ立てします。
このスレはリレー小説を書くスレです。
・誰でも参加できます。
・本文に入る前に前のレスナンバー「>>前のレスavを入れて下さい。
(ダブりによるストーリーの混乱避け。重なってしまった場合は先に投稿されたものを優先して続ける)
・できれば連投は避けて下さい。
・世界観を大切に。
>>2の人がスタートさせて下さい。
- 129 :名無しさん :08/11/20 09:26:50 ID:Sk2hZZpB
- 綺麗に縦に裂かれた女性の体。左、右と口が動き、しゃべる。
ギコは驚きのあまり口を大きく開け、モララーは顔面蒼白になり、不気味にその様を見ている。
塔に反響していた悲鳴が耳につかなくなった頃、フッと一息。モナーだ。
「……まあ、異の存在の遭遇や証明が……
こんな在り来たりでグロテスクだろうとは予感していたがな」
「予感していた割には俺達に負けず劣らずの悲鳴上げたじゃねぇかよ、クソ親父様」
ころりと平常の顔に戻っている義父親に、ギコは台詞を吐く。
疑心たっぷりなじと目を向ける義理の息子に……
あろうことか、モナーは舌を出し、キラッ☆とピースサインを頭に翳した。
「二人に便乗してみたモナ☆」
「そんな便乗いらねぇェェェェ!!!!っていうか、キャラ違ェェェェェ!!!!
先程までのシリアス色は何処いったァァァァ!!!!」
「ど、どーどー、ギコ……落ち着いて……」
てめえのそれがよっぽどグロテスクだの、今すぐたた斬ってやるだの、怒りに燃えるギコをモララーは止める。
- 130 :名無しさん :08/11/20 09:29:30 ID:Y27tQuyF
- 演技じめたため息を盛大に吐くモナーを、サジタリウスは感心と警戒の視線を向けた。
「異の存在のこと……知ってるんだ。へぇ、その口振りからだとミィがこんな状態になる前から気付いてたみたいだね。何時から?」
「最初から。最も、確信したのは、そこに倒れている娘さんが隙を見せた時だが。
とっさに『思い込む』などと、感情を持たない人間が器用に出来る訳がない」
- 131 :名無しさん :08/11/20 12:51:03 ID:YbAc2ZDa
- 「はは、ニンゲンにしてはなかなかの洞察力だね」
「恐れ入ります、『使者』殿。レイズ様は今、どちらへ?」
「レイズ……?」
ギコの唇が、震えるように動く。
それは畏怖か。それとも、純粋な恐怖か。
ギコの視線が、大きくスリットの入った、自らの太ももへと向かう。
そこに描かれるは、深青にて描かれた『不死鳥』
去来するは、それを刻まれたときに見、聞いた『女』の姿―――。
「何だ、これは。頭が割れる……」
ギコが、地面に倒れ伏す。
- 132 :さらら :08/11/20 22:35:49 ID:Muj8dlr/
- 「どうした、ギコ?」
モララーが心配そうにギコへとよる。 しかし、
「あああああああああああああああああああああああ!!!?」
絶叫が一帯の空間を響かせる。いきなりの絶叫に、さすがのサジタリウスも反応した。
「……なるほど、そういうことか」
口元を吊り上らせながら呟く。 しかし、サジタリウスがそれに興味を持ち続ける時間は十秒も無かった。
誰もが反応できない速度で、エスピオンの死体をどこからだしたのか、大きな袋で包んだ。 死体の入った袋を何故かお姫様抱っこの様に持つと。
「今の僕のお仕事は状況把握とお知らせだ。まぁ、このこのおかげで仕事が増えたけど。
知らせとくよ。君達は自分の身に気をつけたほうが良いってね」
「何?」
モナーとモララーがギコの身を案じながら、サジタリウスを睨む。しかし、そんなものに動じる相手ではなかった。
「特に僕には気をつけたほうがいいよ。今の君達じゃ全員がかかってきても僕に傷一つつけられないし、なんたって僕は、『サジタリウス』だからね」
そこまで言うと、死体の入った袋を担いだ少年は、音も無く、姿を消していた。
- 133 :名無しさん :08/11/23 21:55:27 ID:XvDKuFOg
- 静寂がその場に宿る。
ギコは未だ頭を抑え、うめくが、先程よりもよっぽどおとなしくなった所を見ると幾分かマシになったようだ。
膝にシィナを乗せ、モララーは引き続きギコの身を案じている。
そんな中、モナーは薄目を開け、冷静に頭を働かせていた。
(……やはり、そう簡単に居場所を告げることはない、か。
だが、あの者はいささか自分を過大評価し、こちらを過小評価しているな。
使者の割には見る目がない。私はこの二人をどこにでもいる雑魚に育てたつもりはないぞ?
それはさておき……ギコには訊かなければならないことがある。
私の予想通りの答えを出すだろう、あの問いを)
- 134 :さらら :08/11/23 23:25:00 ID:19OE8YB2
- サジタリウスは薄暗い空間の中にいた。
無数のケーブルのようなものが床を埋め尽くし、壁には、これまた無数の巨大なカプセルが並んでいる。
中には緑、赤、青、黄色など様々な色の液体が入っており、一緒に意味不明な機械や眠っている人体なども入れられている。
相変わらず悪趣味な場所だと、サジタリウスは誰にも聞こえないように舌打ちする。
不意に女の声が聞こえてくる。
「おかえり〜♪私の可愛いこねこちゃん♪状況はどうだった〜?」
キャッキャキャッキャしながら現れたのは薄縁眼鏡と白衣が印象の、絵に書いたような研究員といった風貌の20代前半と思える女だった。
やや豊かな胸が揺れているのを見ると、こいつまた下着着ていないのかと、サジタリウスは心の中で呆れる。
レモナ・ガブリエール。彼の上司に当たる存在だ。
「あなたの予想通りでしたと言っておくよ。あと、エスピオンがやられた。直してあげて」
サジタリウスがエスピオンが入った袋をレモナの前に置く。 すると、彼女は「アラ?」と不思議そうに首をかしげた。
「そうなの……。解ったわ♪ちゃんと元通りにしてあげる♪それと、ゴメンネ?『私の最高傑作』であるあなたにこんなつまらないお仕事お願いしちゃって」
本当に申し訳なさそうに両手を合わせるレモナ。サジタリウスは小さくため息を吐く。
「問題はありません。だけど、非番の奴もいたのに、何故僕を?」
「だって〜。『ヴェガ』は我侭だから聞いてくれないし、『バルムンク』は寝たまま起きないし〜」
「………………」
本当にダメな上司だなと、サジタリウスは心のそこから呆れた目線でレモナを睨んだ。
- 135 :名無しさん :08/11/24 07:55:01 ID:UnaqTY68
- 「でも、良かったわ♪ 私の予想通りってことはやっぱり、そこにいたのね〜」
渡された袋の封を開け、中身を確認し、さて、どうするか〜とレモナは首を捻りながら、言う。
サジタリウスは揚々と死体を掴む上司を見、ため息をついて後ろの壁に背中をつけた。
「ええ、まあ……。しかし、理解できません。
昔も現在も貴女が執着するAAに、今回初めて僕は接触しましたが、凡人より少し上ってくらいで貴女に釣り合うと思いません」
「ふふふ、いささかどころか、重度のセンスのなさね。全然変わってないわ。君の、人を見る目。
ま、いいか♪ そんな視点で君が見ることも私の予想通りだし。
モナー、モナー、私が愛してやまないモナー。好きよ、好きなのよ、貴方の事。
貴方を私の元で一生飼い慣らしたいくらい。
いつも、閉じている瞼をこじり開けて、私だけを映す眼球にしたい。
貴方の全てを私の物にしたい…………
否、してやるわ……絶対にしてやるんだから。
逃がさないわよ……モナー………………」
- 136 :名無しさん :08/11/25 15:47:54 ID:0J9xerw5
- 射手座、決して外れぬ魔弓の主の名を持つ異形は、病んだ創造主の狂った言葉に嘆息する。
嗚呼、AA、すなわちヒトとはココまで壊れる事の出来るモノなのかと。
それならば、この異形―――僕のような射手座や、密偵の方が余程常識的ではないかと。
かの、世界を覆う『不可視の死壁』を作り出した、ヒト。
かの、異形を除く全ての心を凍らせる戦争を勃発させた、ヒト。
そして、この身、異形を作り出したのもまた、ヒト。
主は従者に劣る。それは如何なる宇、如何なる宙においても同じことだ。
それに幾ばくかの寂寥を感じたとして、それを誰が責められようか。
嗚呼。嗚呼。嗚呼。
不条理な世の中よ、私は貴様が大嫌いだ。私に、親を忌む事を強要するこの世界は憎んで余りある。
無意味な運命よ、私は貴様が大嫌いだ。どうせ無視される運命にある運命は、最初から存在しないほうが尚良いのだから。
無慈悲な真実よ、私は貴様が大嫌いだ。しかし真実は無慈悲である。どんなに嫌ったとしても、それは決して変わりはすまい。変わるとしたら、それは世界が壊れると言うことだ。
不可能な夢よ、私は貴様が大嫌いだ。どうせ実現できぬと言うのならば、何故ヒトは異形を作り出したのだ。異形は、決してヒトに従属し得ぬと分かっていて、何故。
こんな、絶対の平等という不可能な夢を追求させるのか。
「全く、アナタは罪な御方ですよ。『レイズ』様」
かの『魔剣』を、バルムンクを作り出したことも含めて、ね。
- 137 :名無しさん :08/11/25 19:27:29 ID:e6L52UT1
- 場所は【塔】に戻る。
真っ暗闇の中、カタカタと茶色い毛に覆われた手高速でキーボードを打つ。
フサは舌を巻き、隣で手持ち無沙汰でいるツーに機械を通じて話しかける。
「『……ツー、あともう少しだから』」
「意外とかかってるな」
「『流石は【塔】ってところだな。裏口は手薄だったのに、システムに潜り込むのには厳重なセキュリティを一々突破しなきゃならない』」
「厳重ならば厳重な程、莫大な情報を所有してる可能性が高いって事だろ? 今回は期待できそうじゃねぇか」
「『…………………』」
「【あの女】が【レイズか、否か】………。
白黒ハッキリさせようぜ」
- 138 :さらら :08/11/25 19:53:11 ID:i96tZlNb
- 一方、苦しみから解放されたギコは、平気だと豪語するも、自室で寝るようにとしぃとモララー言われ、結局、ベッドに寝ることになったのだ。
(あいつ等。一体なんだったんだろうな……)
いきなり現れた女の方もそうなのだが、それよりもその後に表れた少年のほうが気になる。
尋常じゃなかった。特に何も考えていないような表情をしていたが、内に秘めた殺気は、弱い生命なら近づいただけで死ぬかもしれない。
少年は名をサジタリウスと言った。
どういう経緯があってその名を名乗っているのかは解らないが、もしかしたら、それは彼なりの悲劇があって、その名を名乗っているのかもしれない。
そして、そのサジタリウスが言っていた、異の存在。モナーの言っていたレイズ。そして、自分の脳裏に移った女の像。解らない事だらけだ。
「俺……あいつの事も、今起こってることも、全然解ってねぇ……」
それなのに、休んでなんかいられない。あんなことが起こったのに、休んでなんかられない。
ギコはとりあえず上半身だけを起こす。それと同時にガチャリと部屋のドアが開く音が聞こえた。
首を動かしてそこを見てみると、そこには、モナーとしぃが立っていた。
- 139 :さらら :08/11/25 21:16:02 ID:i96tZlNb
- 138のいろんなミスを修正(ゴメンなさい)
一方、苦しみから解放されたギコは、平気だと豪語するも、休んでいるようにとしぃとモララー言われ、結局、適当に休めそうなところで寝ることにしたのだ。
(あいつ等。一体なんだったんだろうな……)
いきなり現れた女の方もそうなのだが、それよりもその後に表れた少年のほうが気になる。
尋常じゃなかった。特に何も考えていないような表情をしていたが、内に秘めた殺気は、弱い生命なら近づいただけで死ぬかもしれない。
少年は名をサジタリウスと言った。
どういう経緯があってその名を名乗っているのかは解らないが、もしかしたら、それは彼なりの悲劇があって、その名を名乗っているのかもしれない。
そして、そのサジタリウスが言っていた、異の存在。モナーの言っていたレイズ。そして、自分の脳裏に移った女の像。解らない事だらけだ。
「俺……あいつの事も、今起こってることも、全然解ってねぇ……」
それなのに、休んでなんかいられない。あんなことが起こったのに、休んでなんかられない。
ギコはとりあえず上半身だけを起こす。それと同時にタンッ。 と軽い足音が聞こえた。
首を動かしてそこを見てみると、そこには、モナーとしぃが立っていた
- 140 :名無しさん :08/11/25 22:14:27 ID:e6L52UT1
- 「…………………」
この場面、さっきまで気絶していた姫に対して、『お前、大丈夫かよ』類の言葉を投げ掛ける場面だが、俺はあえて何も言わない。
その訳をシィナは重々と承知しているようだった。
『保障はしない』、俺が言った言葉を深く噛み締めている。
「……モララーは」
「この近辺に誰もいないか、周っている。何、すぐに戻ってくるだろう」
- 141 :名無しさん :08/11/27 23:44:48 ID:RwZTV71M
- 「そうか」
- 142 :名無しさん :08/11/29 07:32:46 ID:T8C0wTW2
- 「で、質問だ」
やっぱりktkr。この下種親父が。
「レイズとは、何だ?」
- 143 :名無しさん :08/11/29 19:38:09 ID:Bqd9BBIc
- 質問が来ることは予想の範囲だったが、質問の内容は予想外だった。
「……? それは俺の台詞だろーが。勝手に盗んでんじゃねーよ」
「何故、私が、何も持ってないお前から盗まなくてはならんのだ。
まあ、このやり取りは必然といえば必然だが」
- 144 :名無しさん :08/12/03 17:19:06 ID:DVHRLVj6
- 「……はっはーん、何か知ってやがるな? それで、あまり深くはしらねえとみた」
「名答モナ。で、レイズとは?」
その問いが再度発せられ、ギコは数秒押し黙る。
「レイズとは?」
またも発せられる問いに、ギコはすっくと立ち上がり、つかつかとシィナに歩み寄る。
シィナの、タイトな漆黒のロングスカート。
それの裾をつかみ、音を立てて引き裂く。シィナの悲鳴と、引き裂かれる布の甲高い音が和する。
モナーは、じっと黙ってその様子を見つめていた。見つめる瞳には、シィナに対する心配の念は存在せず、ただ結果を見守る気配だけがある。
下着が見えないギリギリの位置で、布の切れ目は止まる。さながら、先刻二つになった密偵の体のような状態になった、シィナのスカート。
その合間、『少女』ではなく、『女性』の区分に入る程に成熟した、真っ白で程よい肉付きの左太腿が覗く。
太腿に刻まれるは、深紅の刺青。王家の係累に属することが許された者のみが刻印を許される、王族の証。それを、【不死鳥】と人は呼ぶ。
「……で?」
「こいつがレイズ。不死鳥=レイズってこった」
- 145 :名無しさん :08/12/03 23:57:10 ID:Zpyg82z3
- 「レイズ……不死鳥……」
モナーは腕を組み、顎に手を添え、考え込む。
- 146 :名無しさん :08/12/05 22:18:43 ID:on0kIBQ2
- それも束の間、おもむろにモナーはアフォ姫に向き直ると、頭の位置を低くし、目を伏せ、
「姫はレイズについて何かご存じでしょうか?」
尋ねた。
- 147 :名無しさん :08/12/06 11:11:08 ID:RegeHe1I
- 「何って……歴史家が言ってることくらいしか知らないわよ」
- 148 :名無しさん :08/12/06 12:26:16 ID:r0c7hrMy
- 「本当に、ですか?」
- 149 :名無しさん :08/12/07 12:13:01 ID:4m7ylEiu
- 「あら、嘘をつく必要があるかしら? ……それとも、私が嘘をついているとでも思う?」
左足を隠すように、シィナが立ち位置を変える。と同時に、どこかおどけた言葉を吐いた。
「無い。それは絶対にありえねえ。お前に嘘をつけるだけの頭があるわけ無いだろう」
対して、たいした罪悪感も抱いていないギコの憎まれ口。
お約束のコントが数分繰り広げられ、モナーはやれやれと首を振る。
「まあいいでしょう。史実だけでも結構です。殿下、是非とも」
と言いつつ、忠誠を誓う騎士のように地面に手をつくモナー。
「……仕方ないわね。あの馬鹿げた大戦争を起こす引き金になった女、でしょう?
二国の王を誑かし、取り合いをさせることで戦争に発展させたって言う話。ラスプーチンみたいな人ね。
引っかかった王も馬鹿だけど、引っ掛けたレイズはまさに悪女そのものって聞いたけど?」
- 150 :名無しさん :08/12/07 20:37:28 ID:zMfgmIgr
- (ん……んん?)
ギコはその悪評に違和感を抱く。
- 151 :さらら :08/12/07 22:24:53 ID:jB1SqkNs
- 「ま、待て、待ってくれ。おかしいぞ?
俺が聞いたのは、レイズってのはジャンヌダルクよろしく、戦争を止めるためるなら自分の命すら問わない聖女のような女って話だぞ!?
話が矛盾するどころか、まったくの逆じゃないか!」
ギコの反応にシィナはしかし、驚きもしないで静かに首を横に振る。
「たしかに見方によってはそうも言えるし、表向きはそう言われているの」
だけどね、とシィナは続ける。
「実際は、彼女は自分が戦争を起こしたのを後悔し、自分で止めようと努力したけど、それは戦争を激化させるという行動に繋がってしまった。
結局、彼女が悪女と呼ばれる理由は、十二分にあるのよ」
「…………」
ギコは、彼女の話の後半はもう耳に入れてはいなかった。
理由は、彼女が、シィナが戦争について語る姿など見たくはなったし、彼女自身、相当辛そうな顔をしていたから、今の彼女の全てを拒絶したからだった。
- 152 :Longinus ◆K6rAsqUXw6 :08/12/08 11:43:35 ID:qLGXID4J
- 「まあ、自覚があれどなかれど、どんな女性にも悪女の素養があるということさ。
ジャンヌ・ダルクにしたって、イギリス側から見れば、勝ってた戦争をひっくり返した大敵、という意味で悪女だろうしね。
本質的な意味でもそうかもしれない。なにせ、貴族を誑かして王の元に連れて行かせたという話だからね。
自分の目的のためには何がどうなってもかまわない。ただし、それが公のためであって自分自身のためじゃなかったから聖女と呼ばれた、ってだけの話さ。ベクトルの問題なんだよ、要するに」
と、意味深なことを言うモナー。
対するギコは、
「ンなのはどーでもいいんだよ」
と話を打ち切る。
「で? これで満足かい親父殿?」
- 153 :名無しさん :08/12/08 23:13:49 ID:ygskUcw4
-
「満足、ではないな」
- 154 :ユー:08/12/09 00:45:19 ID:JMO3bxyz
- 「謎が多いわね。
ちょっと眠くなっちゃったから寝かせて」
シィナは軽くあくびをし、ゆっくりと仰向けに倒れて目を閉じる。
こんな所で寝るなと言いたかったが、そこはスルーをした。また、コントのようなやりとりをするのが面倒だからだ。
- 155 :名無しさん :08/12/09 19:30:43 ID:Ql37aKAG
- 【塔】の付近を巡回するモララー。
先刻の神射手の去った方向を監視するも、既に日は沈んでいる。
「まいったなあ……。そろそろ薬も切れて来たし、他に来るなら早く来て欲しいんだけどね」
空は曇り。夜の空は一面雲に覆われ、月明かりも星明かりもない。
【塔】は市街から離れているし――国境沿いで元戦場なのだから、それは当り前なのだが――電飾の明かりも皆無である。
「……ほととぎす 自由自在に聞く里はって奴かね。まあ、風雅でも何でもない殺風景な景色だけど」
そう言いつつ、懐よりジャマダハル……ブンディ・ダガーとも呼ばれる、主に北インドにて使用されていた武具で、ギコのククリナイフ同様、今は廃れてしまった武器の一種だ。
握りは刀身とは垂直に、鍔と平行になっており、手に持つと拳の先に刀身が来る様な造りになっている。
従って、拳で殴りつけるように腕を真っ直ぐ突き出せば、それだけで相手を刺すことが出来る。
力を入れやすく、また鎧の貫通も簡易な形状として、ペシュカドとともに戦場の主役となった武器である。
抜いたとはいえ、それを構えようとする気配はない。握力測定器を握るように握りを握っただけだ。
「―――人混みがないだけ、こっちの方が好みかな。僕にとっては」
そう、ひとりごちた。
- 156 :さらら :08/12/09 21:24:13 ID:Hix+2Rm1
- 同時刻。サジタリウスは上司のレモナにエスピオンに預けた後、その場を後にし、ある目的地に向かっていた。
(アイツにはあまり会いたくないんだけどね……)
前面が特殊な造りで出来た長い廊下の先にはいくつもの扉がある。それら全てがスライド式の二枚扉となっていて、サジタリウスは一番手前の扉を開け、中へと入る。
「はぁ……」
中に入って刹那の速さで心の底からため息を突く。原因は自分の視界に写る、自分と同じ亜人型のAAの女。年は、見たところ18前後といったところだろうか。
そいつはクイーンサイズのベッドに横たわっていて、焼き菓子を貪りながら、何かの雑誌を読んでいる。おそらくファッション雑誌だろう。
自身より長い金髪をもはや掛け布団の扱いで自身を覆わせ、身に着けている服はしわだらけ。洗濯しているのかがメチャクチャ気になる。
というか、自分の周りにはこんな女しかいないのは何故だろう。
「人の、しかもレディの部屋に許可なく入ってきていきなりため息なんて、どういうことよ?」
目も向けないでこちらそう言ってくる。サジタリウスは即効でそれを無視しようと心の中で決める。
「『ヴェガ』。今僕は君を10発前後殴りたいところだけど、ここは我慢して……任務だよ」
サジタリウスの言葉に、女、『ヴェガ』が体を起こす。その顔に、緊張感はない。
「なに?あなたの性欲に関することだったら私は大大歓g」
「撃つよ?」
「嘘よ、嘘。嘘だからそのどこから出したのか解らない大経口の拳銃をしまいなさい」
ちっ……!と、心の中で舌打ちすると、彼女の言うとおり、銃をしまう。あと3秒で撃つつもりだったのに。
「それで、レイズを叩くの?それでもいいけど、私の戦闘力はあなたよりは下よ?」
「安心して。目的はそっちではなく、監視だよ」
- 157 :名無しさん :08/12/09 22:22:18 ID:lgfZWQP6
- 「監視?」
一回瞬きし、準備運動がてらに彼女は軽く体を動かし始めた。
こきりと気味の良い音が鳴る。
- 158 :名無しさん :08/12/10 12:34:17 ID:BRYEtjSo
- 「はー、それなら魔剣(バルムンク)の奴のほうが上等じゃない?」
バリバリと音を立て、乱杭歯で煎餅を食べる織姫(ヴェガ)。まったくもって合致しない中身と名前だな、と嘆息してしまう。
「僕はあいつと会いたくない。目の前にして理性を保てる自信がないからね。それに、今は夜だけどもう少しで闇が明ける。
バルムンクは朝には行動できないだろう?」
「はー……それで私ね。で、あんたは? 悪女様を叩く?」
そう言って、袋の中の煎餅を殴る。粉々になった煎餅をレイズに見立てているのか。食べ物は大切にしましょう。
「まさか。まだ計画に必要なピースはそろっていないんだよ? 静観するだけさ。レモナにも話は通してある。あとは密偵(エスピオン)の復旧状況と、王女と護衛の状況次第だ。
まったく、不死鳥を刻んでおくとは思いもしなかったよ。あの王女、馬鹿だ馬鹿だと思っていたけどなかなかいい中身してるじゃないか」
「はいはい、神射手(サジタリウス)の名前を持つだけあって機を読むのに長けてますねー。
ったく、化身も出来ないくせに」
「素の戦闘力が上等だってだけさ。大体、命を削ってまで瞬間最大風速を上げるなんてのは趣味じゃない」
皮肉っぽく、口の端を釣り上げながらいう。
「皮肉?」
案の定反応してきた織姫に、
「悪口」
即答で返す。
「上等じゃん」
- 159 :さらら :08/12/13 13:54:49 ID:H8AfRwnq
- その返事に、サジタリウスはフッ、と笑った。
「ま、やるからには、しくじらないで生きて帰っきてよね。『僕ら』は5人しかいないんだから」
「しくじる=死。っていう概念はいかがなものかと思うわよ?」
「しくじる気?」
彼の挑発に、織姫はムッと、眉間に皺を寄せた。
「あぁもう、なんなのよアンタは!いきなり入ってきて、仕事押し付けた上にあたしに喧嘩売ってんの!?」
ギャアギャアと騒ぎながら物を投げまくる織姫。 サジタリウスは軽々とそれらを避け、一瞬で彼女に肉薄し、彼女の腕を掴んだ。
「怒らないで。大丈夫、僕は君がちゃんと仕事をしてくれるって信じてる」
「っ!?」
怒っていた彼女の顔が驚きのものへと変わる。
それは、一瞬で距離をつめられて不意つかれたからなのか、彼の顔との距離がほんの数センチになったからなのかは、彼には解からない。すると、織姫は顔を真っ赤にして
「あぁ、もう!解ったから出ていきなさい!」
ドン!と、サジタリウスを突き飛ばした。
彼は、やれやれと思いながら、この部屋を後にする。顔を真っ赤にするほど怒らせて閉まったからには、長居する訳にはいかない。
扉が背後で閉まるのを確認すると、彼は全面が特殊な造りで出来た廊下に並ぶ、ここ以外の扉を見る。
(今は時期じゃないけど、その時はすぐにやってくる。『ヴェガ』、『バルムンク』、『アトラス』、僕。そして、エスピオン。いや、『ラジエル』。僕らで、全てを終わらせ、始めだすんだ)
彼は誓う。 それは、創造者のためなのか、自身のためなのか、それとも、他の何かのためなのか。 それは彼にしかわからない。
- 160 :名無しさん :08/12/14 19:43:17 ID:IkG9mg27
- 神射手が退出したのを見取り、織姫は立ち上がった。
毛布代わりにしていた髪の毛が、クイーンサイズのベッドから落ちる。その情景は、朝日を浴びるナイアガラのようだ。
ファッション雑誌を無造作に投げ、パチンと指を鳴らす。
それと連動したかのように、雑誌に火が付き、燃え上がり、そして雑誌は灰となって床に積もる。
織姫は一度伸びをして、眠そうで気だるげな声を上げる。その、大人びた体型と体に似合わぬ無邪気な仕草と声には、男ならば簡単に魅了されるだろう。
「はぁーあ、お仕事お仕事、っと。んー、しかし神射手の奴が気にかけるほどの奴ってどんなもんなんだろね」
そう独語し、しわのよった服を脱ぎ捨てる。
傷一つない、純白の肌。血と肉と皮で構成されたにもかかわらず、猫のように奔放にしてしなやかで、百合のようにたおやかな、乙女の柔肌が外気に晒された。
「秘密の領域(ラジエル)を壊した、ねえ。悪い冗談じゃないのかしら。……魔剣(バルムンク)やら神射手なら別としても、あれは私やアトラスでも及ばない怪物だと言うのに」
しかし、その体に起きた変化は、乙女の美しい体の面影を存分に叩き壊した。
変化は下半身から始まった。
液体が沸騰するのと似た音を立てて、腰から足の指先にかけて激しく泡立つ。
- 161 :名無しさん :08/12/14 19:44:17 ID:IkG9mg27
- 織姫の顔が苦痛に歪む。乱杭歯が、激しく食いしばられる。
やがて泡立ちが止んだ時、その右足は無くなり、変わりに一本の、人魚のそれのように、太くて大きい尾のようなものが飛び出した。
『それ』には、針のようで棘のような、鋭い純白の突起が一列に並び、全体は漆黒の鱗で覆われる。
次いで、両腕も泡立ち、無くなる。かわりに何かが出でることは無く、ただ単に腕は消えうせた。
一本の尾で器用に体重を支える織姫が、腹痛に耐えるようにして体を二つに折る。
背が泡立ち、二枚の翼が背から飛び出した。蝙蝠のような、骨と飛膜で構成された翼である。
そして、変成の最終段階。
織姫の金色の頭髪が黒く染まり、一本一本が腕の太さまで膨張する。
髪の毛の形を失った蛋白質の塊は織姫の本体に巻き付き、一体化する。
髪の毛と一体化した織姫の体は、あろうことか、長く長く伸びた。
すでにして体は窓から飛び出してしまっている。翼によって窓はVの字に壊れてしまっていた。
織姫の顔も、既に人間のそれではない。顔はトカゲのような形になり、目は釣りあがり、口は裂け、二股に分かれたちろちろと舌が覗いている。
その姿を例えて言うならば、ワーム。
古英語叙事詩ベーオウルフにて、ドラゴンと同じく、騎士によって倒される運命にある怪物の名である。
「秘密の領域(ラジエル)ほどじゃないけど……。私も、十分化物だわね」
人の形を捨てた異形は、窓から飛び出しながら、そう独語した。
世界を喰らう終端の王にして、継ぎ接ぎされた偉大な可能性の一角たる織姫(ヴェガ)は、朝焼けの空を飛びながら、そう独語した。
- 162 :さらら :08/12/16 13:34:14 ID:7FUCXokz
- モナーは全員が眠りに着いたのを確認すると、エスピオンの死体があったところに向かった。
血のあとが残った、つまり、まさにエスピオンの死体があった場所で膝をつくと、その血を指でなぞる。
時間が経ったせいで、既にほとんど乾いているが、一部は違った。
「乾いていないどころか、何だこれは?」
彼の指についた血は、彼の言うとおり、まったく乾いていない。それどころか、変に水々しいのだ。
鉄臭くて、不快感すら感じるほど赤いのに、感触は、まるで森の中で僅かに湧く、聖水のように、サラサラしていて、肌触りが良い。
そこで彼は、一つの可能性に気付く。
「まさか、『ぽろろの血』か!?」
ぽろろ。それは、今は存在しないAAの種族の名だった。
彼らは、最も愛らしく、美しい種族と言う。しかし、それは表のみの顔。
裏の顔は、まさしく化けもの。しかもそれは性格がではない。まさに姿そのものが化け物だと言うのだ。
ぽろろの一族は肉体変態(メタモルフォーゼ)という特殊能力を持ち、変態後は、凄まじい戦闘能力を持つと言う。
しかし、その力のせいで、彼らは宗教的に粛清され、今は残っているぽろろ系のAAは両手で数えられる程度らしい。
「それにしても、何故あの者の体に、こんなものが含まれている?」
辺りにこびり付いている血は、全てが全てぽろろの血というわけでなかった。
水と油のように、決して交じり合うことなく、湯から壁にこびり付いていた。
「まさか、あの実験……。姉様の、あの実験か!?」
- 163 :名無しさん :08/12/16 17:06:41 ID:OLHSp6kp
- 「……父さん」
背後より聞き慣れた声が聞こえ、振り向けばそこにはモララーが立っていた。
窓から見える夜の背景をバックにし、黄色の肌が月に溶け込んでいるように見えた。
まるで幻想のようだと心の奥で思うと、彼の方に向く。
「モララーか」
「はい。ここに来る途中、二人の所に向かったのですが……ご存じの通り、ギコも姫も眠っていたので……」
「様子はどうだった」
「今のところ、一つを除いて、特には。あのバイクに乗っていた二人の動向は掴めませんでした」
「……あの二人に関しては、今は良い。不審な動きを察知しない限り、手は出すな」
二人とは、この【塔】に来る途中に見掛けた、空中を走るバイクに乗っていた二人の事だ。
いささか気になる点はあるが、今は保留にしても良いだろう。
「お前も今日一日ご苦労だった。休める時に休め」
「そうさせていただきます。ですが、その前に」
「……『姉様』とは何の事ですか?」
- 164 :名無しさん :08/12/16 17:39:57 ID:AfDq2dQj
- モナーは自らの顎に手をやり、ゆっくりと撫ぜながら独語する。
「サジタリウス……射手座、神射手か。成程成程、そういうことか」
懐から細葉巻(シガリロ)を取り出し、普通にライターで火をつける。
数十分、燃え尽きるまでシガリロを咥え続ける。煙に隠れた顔は、天敵と敵対した者のように、盛大に険悪な顔になっていた。
「姉様……貴方は、まだあんな夢を見つづけていると言うのか。世界の守護者になるなどと、レイズを継いで完全な平等を目指すなど。
悪い冗談だ。そうでないならば幻想だ。どちらにしろ、レイズになった時点で貴女は終わってしまうと言うのに」
新たなシガリロに火を付け、モナーは語る。
「私達はそう有るべくして生まれ、有るべくして生き、有るべくして逝くはずだ。そうあるように出来ているはずなのだ。
高望みは出来ないだろう。それは私達に課せられた命題に反している。
そこまでして、世界に殺されたいのか。否、殺されてしまうとしても成し遂げたいのか」
モナーの脳裏に、『姉様』の姿が浮かび上がる。
―――こんな戦争はもう起こしちゃならないのよ。
「違うな。我等は戦争を起こし、人を間引くために生まれただろう。
ふん、異形の遺伝子にぽろろの血を混ぜ込むか。それならば十分、確かな抑止力になりうるだろう」
まだ半分以上残っている二本目のシガリロを投げ捨てる。一瞬目をやり、すぐにそらす。
「下らぬ。幻想にしても下らなすぎる。
だったら、私は―――」
くるりと身を翻し、休息所へと戻るモナー。
漆黒のコートがばさりと翻り、風を孕んで大きく膨れ上がった。
「―――貴女の幻想を、叩き壊すまで」
- 165 :名無しさん :08/12/16 20:05:41 ID:AfDq2dQj
- >>164はヌルー頼む。
「……お前の知っているレイズに関しての情報と交換だな」
「レイズ、ですか。両国の戦争の引き金を『引いてしまった』、不運と言って差し支えない女性だと聞いています。
戦争において指揮を執り、かのオルレアンの聖女のように、卑劣極まりない手段で破竹の快進撃をした女性と聞いています」
「やはり、お前も知らんか……」
「姉様、とは?」
懐から細葉巻(シガリロ)を取り出し、普通にライターで火をつける。
数十分、燃え尽きるまでシガリロを咥え続ける。煙に隠れた顔は、天敵と敵対した者のように、盛大に険悪な顔になっていた。
「……私と同じ宿命を持つ女性の事だ。世界の調律者。
私達はそう有るべくして生まれ、そう有るべくして生き、そう有るべくして逝く。そうあるように出来ている生き物だ」
モララーは、モナーの奇怪極まる発言に押し黙る。
両者の間に流れる、重苦しい空気。それを打破するために発せられるモララーの言葉は、
「まるで、人間では無いとでも云うような……」
余計な、重苦しい沈黙を招いた。
「……人間ではない、か。言いえて妙とはこの事かな。そうだな、私たちは確かに人間にあらざるモノだ。起源という点で言うならば、あのサジタリウスとか云う小僧と似たようなものさ。
人外。そうあるべくしてあり、そうあるべくして逝く」
- 166 :名無しさん :08/12/18 14:51:43 ID:0v/zUQKP
- モララーにとって、その言葉は奇異なるモノとしか捉えることは出来ない。
しかし、外見には特に何の変化もない。普段通りの、飄々とした雰囲気で煙草を吸っている。
「信じられないか? モララー」
「……信じるか信じないかで言えば、答えはYESです。どんな突拍子なものでも、父さんは絶対に嘘は吐かない」
モナーの穏やかな顔に、軽薄な笑みが浮かぶ。
「絶対に、か。成程、確かにそうだ」
「何故、私に言うのです? 私は人が減ろうがどうなろうが知ったことではありませんし、むしろ歓迎すべき事態だと思っていますから、反感は覚えません。
ただ、ギコは―――」
「ギコには言うなよ。まあ、言おうが言うまいが、終焉は始まった。ギコ程度の力では、俺を止める事は出来ん。……筈だ。俺のように、世界に力を与えられたなら話は別だがな。
サジタリウスとやらの目当ては一つだろう。―――レイズ。俺と同じく、世界の調律者にして人類の殺戮者たる『黒のレイズ』を壊すための戦争が始まる。
俺の役目は『黒のレイズ』を守り、人類を終焉させること。そして、『白のレイズ』を叩き壊すことでもある」
突拍子もない話。何故自分にそんなことを話すのか、という疑問が、モララーに深く濃く大きい疑問を抱かせる。
しかし、それを口にすることはしない。―――否、出来ない。父には逆らえぬ。絶対に逆らうことは出来ぬように出来てしまっている。
だから、今、彼が口に上せる言葉は一つだけ。
「分かりました。何があろうと、私は父さんについていきます」
モララーの言葉を聞いて、モナーの顔が、表情が緩む。
嬉しそうに、それでこそ俺の息子だ、とのたまう。
普段ならば小躍りして喜ぶはずなのに―――
何故だか、今だけは、体は嘔吐になるほどの不快感に支配されていた。
- 167 :名無しさん :08/12/18 19:02:48 ID:PJjHwHoL
- ………本当に、これで良いのか?
「浮かぬ顔をしておるな、ギコ・ハニャーン。そなたの『夢』で、妾と茶を飲むはよろしくなかったか……?」
「さあ、どうなんだろうな……自分でもよくわかんねぇよ。
ただ、お前をレイズと認めていいのか否か、それで悩んでいる。
どうも、何処かで食い違ってる気がしてならねぇんだ」
- 168 :名無しさん :08/12/18 21:11:24 ID:0v/zUQKP
- 「それはつまり、妾がそなたらの言う聖女であるか悪女であるか、と言う話かな?」
……何故分かるのか。
まさか、心が読めるのか?
「予測と理解に長けておるだけのこと。心など読めぬ」
読心術って奴ね。糞親父がよく使ってやがる。
「なに、歴史とは為政者に都合の良いことが都合の良いように書かれた欺瞞の塊に過ぎん。
そこから細かな真実を読み取ろうと言うのが無理な話ではないかな?」
……そういや、オルレアンの聖女も、イギリス国教会―――アングリカン・チャーチの連中によって魔女扱いされてたんだっけか。
そういう意味では、こいつの言うことも正しい。成る程、世界に冠たる帝国だったイギリスだから、か。
「戯言よ。歴史など、意味を成さぬもの。妾、レイズが聖女なり悪女なりと違う言葉で語られることからも、それは明らかである」
……なんつーか、違和感だな。
馬鹿王女の体と顔でこうも含蓄のある言葉を吐かれると、前後不覚に陥りそうだ。
「どっちなんだよ? 実際のところ。戦争を収める側だったのか、発生させる側だったのか」
「……収める側であった。妾、白のレイズは、戦争を収め、人に安寧と秩序をもたらす為に力を与えられたのじゃからの」
世界から力を。
抑止力って奴か。この世界では、一つの要素があるならばそれに反する要素も併せ持つ。
例えるなら、引力に対する斥力、熱と冷気。ベクトルの違いってだけで、基本的には同じモノなんだが。
あン? 抑止力として力を得たってことは……
「そう、妾に反する存在、調律者にして人の世の破壊者たる『黒のレイズ』も存在する」
- 169 :名無しさん :08/12/18 21:12:02 ID:0v/zUQKP
- こんがらかって来た。
つまり、まず人間がいて、それを滅ぼす為の『黒のレイズ』とやらがあって、それの抑止力として『白のレイズ』が……。
いや、逆か。最初に白、次に黒か。プラスが無きゃマイナスは無い。これは数学じゃなくて、算数だ。
「……さっきの連中、密偵と……サジタリウス? あいつらはお前を滅ぼそうとしてきたって訳か?」
「逆である。彼らは、確実に妾を守るために、そなたらを殺して自らの手元に妾を置こうとしたのだ」
……黒のレイズ、異形連中、白のレイズで三つ巴、か。
俺、モナー、モララーの三人が白側で、異形は分からなくて、黒のレイズ側はよけいわかんねえ、ってか。
分が悪いな。
「止めるか? 妾の護衛を。妾を守ればそなたとそなたの大切なもの達は、死ぬぞ?」
「馬鹿言うな。俺は仕事は完遂するって決めてんだ。でなきゃ生きていけやしねえんだからな。
俺の護衛対象はあの馬鹿王女、その外見からすりゃお前はあいつに寄生してんだろ? だったら、俺がお前を守る。
死んでも……いや、流石に死にそうになったら逃げるが、とりあえず俺はお前の守護者だと思って差し支えない」
我ながら、クサ過ぎて死にたくなってくる台詞ではあるが。
それでも、これは本意だから―――
「……馬鹿な男」
馬鹿王女の外見が、知的で、本気で嬉しそうな笑みを浮かべたのを見て、
―――見とれずには居られなかったとして、誰が俺を責められようか。
- 170 :名無しさん :08/12/22 18:05:27 ID:5mdProLt
- 「起きろ、ギコ」
- 171 :名無しさん :09/02/26 01:01:30 ID:3IhpJmOt
- 紅茶の最後の一口を飲み下したところで、天より降り懸かる声。モララーか、王女か、はたまたクソ親父か……
- 172 :さらら :09/03/15 23:29:37 ID:GSI3RVEa
- 早速で悪いが、答えを言おう。モララーだった。
「一応、お前でよかったと思ってやる」
「褒めてんのかどうか良く解らないからスルーしてこちらの報告をするぞ。昨日、一つわかったことがあった」
「なんだ?」
「昨日、お前が撃退した女を覚えているか?」
「ん?あぁ」
忘れるわけが無い。自分がこの手で相手など、忘れるものか。
ギコの苦い表情を読み取ったのか、モララーはばつが悪そうな顔をしたが、話をやめることはしなかった。
「昨日、そいつの血を調べたところ、ぽろろの血が見つかったそうだ」
「ぽろろの血?」
聞き覚えの無いワードに、ギコは首をかしげる。
モララーはそんなギコを、あきれた様にではないが、なんだか残念そうにため息を吐いた。
なんだろう、無性に腹が立つ。
「まぁ、お前が知らないのは無理ないな」
「頭が悪いって言いたいのか?」
「違う。今では知るものが本当に少ないという理由だ。ぽろろって言うのは昔存在した、AAの種族の一つだ。」
- 173 :名無しさん :09/04/02 16:24:08 ID:8ul9oEZC
- 「だからどうしたってんだよ。希少価値って話なら、いまだに感情を持ってる俺たちの方が上等じゃねえか」
「ん、そうでもないんだな。知ってるかい? ぽろろっていうのは、今じゃ存在しないんだ。希少価値って話なら、モアとかサーベルタイガーとか僕たちよりも高いんだ」
「存在しないはずだから、か」
- 174 :名無しさん :09/05/11 22:27:37 ID:K44vCab1
- 「そう。その「いない」はずのぽろろの血が、あの不死身の女の身体に、多少なりとも流れている……」
成る程、合点がいった。
絶滅したはずの生き物から血が取れるはずがない。
いや、そもそも全く異なる種族の血が、ひとつの身体の中に流れているわけがない。
もし万が一にもあり得るとするならば、それは……
「ぽろろとのハーフってことか?」
「いや、ひょっとしたらもっとえげつないものかもしれない」
そう前置きして、モララーは俺にこう尋ねてきた。
「そのぽろろが、一体何故この世界からいなくなったかって言うのは、知ってる?」
「知るわけないだろ。その「ぽろろ」って種族の名前さえ今知ったんだぜ」
「あはは、そりゃそうだね」
無性に苛立ちつつ急かす俺に苦笑いしながら、モララーは再び前置きっぽい台詞を吐いた。
「今から僕が話すことが、120%の真実とは限らないよ。今のこの世界に残ってるわずかなものから、学者たちが推測した「仮説」に過ぎないんだからな」
「あー分かった分かった。前置きは良いからとっとと教えろやゴルァ」
「もう、せっかちだなあ」
やれやれとため息混じりに、モララーは説明を始めた。
「……昔、この惑星にでっかい隕石が落ちたらしい。それは大陸上のあらゆるものを焼き尽くした。当然、食べるものなんかどこにも残っていない。飢え死に寸前となったぽろろたちは、とうとう……
共喰いを、したらしいのさ」
- 175 :名無しさん :09/05/15 08:07:46 ID:qzWccnVB
- 「ふーん……当然といっちゃ当然か」
「……ビビらないんだな。まあ、ギコがギコである以上、それこそ当然なんだよね……」
「そんな顔してくれるなよ。三大タブーに関しちゃ、カニバリズムだろうがなんだろうが……お前が俺に対して罪悪感を抱くことはねぇだろうが」
- 176 :名無しさん :09/05/21 19:29:38 ID:ZJi40iNd
- 「しかしまあ、共食い、共食いね。暴食、グラトニー。七つの大罪って奴を思い出すな」
呆れたように、ギコは独語する。何かを考えながら、思考をまとめるかのように。
対してモララーは七つの大罪という言葉に反応して、
「色欲、暴食、憤怒、嫉妬、欲望、傲慢、怠惰の七つだね。それがどうかした?」
とギコに問うた。それは、先刻モナーから聞かされた、神代の伝説のような、荒唐無稽な話が頭に残っているせいだったろうか。
ギコはモララーに背を向け、呟いた。
「黒のレイズ、か……」
漆黒の【塔】の一室、風や空気すらも死ぬ【不可視の死壁】のすぐそばで、ギコの声は風に溶けて消えていった。
モララーは、驚愕を隠すのに精一杯だった。
- 177 :名無しさん :09/11/03 21:48:42 ID:ap+btVj7
- (ギコ……?)
- 178 :名無しさん :10/09/26 23:38:38 ID:d61qWvHk
- (………奴に気に入られちまった俺は何処に行き着くのか。先が、見えない)
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